座・閑話   シリン・ネザマフィ著「白い紙/サラム」。

最近読んだ中で特に印象に残る本だと言える。それは、現代のイスラムの世界をイラン人の女性作家が、日本語で書いた作品であるということ。そして書店、古本屋、ネットで探したけれども買い求めることができずに、2,30年ぶりに図書館に出かけて借りた本だということ。その内容を少しご紹介したい。
『白い紙』
時は、イラン・イラク戦争。イラク軍が侵攻してくる頃の、高校生の淡い恋の物語。医師を目指すハサンにとって、これからの自分の未来を描けるはずの白い紙が、戦争という不条理の中、一枚の志願兵を募る白い紙に取って代わっていく。抗えない運命に消されていく希望と人生が、「私」という主語のない文体で語られていく。
『サラム』
 入国管理局に収容されている17歳のレイラ。その彼女の難民申請を手伝う田中弁護士とペルシャ語の通訳にアルバイトとして出向いていく「私」。タリバンに迫害されアフガニスタンから逃れてきたレイラの数々の心の傷が明かされていく。しかしそれが事実であることを証明するものがない。命からがら逃れてきた難民にそれを要求する日本政府。収容中に家族の死が判明し、絶望の中、結局強制送還が行われていく。難民受け入れの現実に直面し無力な自分に向き合うことになる田中弁護士。同時に同じアラビア語を話しながらも絶望が待ち受けているレイラに対して、豊かで平和な国に住む無力な「私」の心の葛藤が滲み出ている。
                              塾長 八木

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